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試験研究費の総額に係る税額控除制度

 

 

[平成30年4月1日現在法令等]

 

1.制度の概要

 「試験研究費の総額にかかる税額控除制度」は、その事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、その試験研究費の額の一定割合の金額をその事業年度の法人税額から控除することを認めるものです。

(注)この制度は、「中小企業技術基盤強化税制」との重複適用は認められません。

 

2.適用対象法人

 

  この制度の適用対象法人は、青色申告法人です。

 

3.適用対象年度

 

  この制度の適用対象年度は、次に掲げる事業年度以外の事業年度です。

  (1) 解散(合併による解散を除きます。)の日を含む事業年度

  (2) 清算中の各事業年度

 

4.試験研究費の額

 

  この制度の対象となる試験研究費とは、製品の製造若しくは技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する一定の費用又は対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究(以下「新サービス研究」といいます。)として次に掲げるもののすべてが行われる場合のその試験研究のために要する一定の費用をいいます。ただし、試験研究に充てるために他の者から支払を受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額が試験研究費の額となります。

  (1)大量の情報を収集する機能を有し、その全部又は主要な部分が自動化されている機器又は技術を用いて行われる情報の収集

  (2)その収集により蓄積された情報について、一定の法則を発見するために、情報解析専門家(※)により専ら情報の解析を行う機能を有するソフトウェア(これに準ずるソフトウェアを含みます。)を用いて行われる分析

  (※)情報解析専門家とは、情報の解析に必要な確率論及び統計学に関する知識並びに情報処理に関して必要な知識を有すると認められる者をいいます。

  (3)その分析により発見された法則を利用した新サービスの設計

  (4)その発見された法則が予測と結果の一致度が高い等だ等であると認められるものであること及びその発見された法則を利用した新サービスがその目的に照らして適当であると認められるものであることの確認

  (注)上記の「一定の費用」とは、次の費用をいいます。

    (1)製品の製造又は技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する一定の費用

      イ その試験研究を行うために要する原材料費、人件費(専門的知識をもって当該試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限ります。)及び経費

      ロ 他の者に委託をして試験研究を行う当該法人(人格のない社団等を含みます。)の当該試験研究のために当該委託を受けた者に対して支払う費用

      ハ 技術研究組合法第9条第1っ工の規定により賦課される費用

    (2)新サービス研究のために要する費用

      イ その試験研究を行うために要する原材料費、人件費(情報解析専門家でその試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限ります。)及び経費(外注費にあたっては、これらの原材料費及び人件費に相当する部分並びにその試験研究を行うために要する経費に相当する部分(外注費に相当する部分を除きます。)に限ります。)

      ロ 他の者に委託をして試験研究を行うその法人のその試験研究のためにその委託を受けた者に対して支払う費用(イの原材料費、人件費及び経費に相当する部分に限ります。)

      (注)新サービス研究に係る試験研究費は、平成29年4月1日以後に開始する事業年度分から対象となります。

 

5.税額控除限度額

 

  この制度による税額控除は、その事業年度の損金の額に算入される試験研究費の額に、次の適用年度の区分に応じそれぞれ税額控除割合を乗じて計算した金額です。

  ただし、税額控除額がその事業年度の法人税額の25%相当額を超える場合は、原則としてその25%相当額となります。

平成29年4月1日から平成31年(2019年)3月31日までの間に開始する各事業年度においては、試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合には、税額控除額の上限(法人税相当額の25%相当額)については、25%に試験研究費割合から10%を控除した割合を2倍した割合(10%が上限)を加算した割合(上限35%)により計算した金額を限度とすることができます。この上乗せ措置の適用を受ける事業年度においては、平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除制度の適用を受けることはできません。

(1) 税額控除割合

  イ 平成29年3月31日以前に開始した各事業年度

税額控除割合は、試験研究費割合が10%以上の場合は10%です。ただし、試験研究費割合が10%未満である場合は次の算式によって計算した割合となります。

(算式) 税額控除割合=(試験研究費割合×0.2)+8%

  (注1) 税額控除割合に小数点以下3位未満の端数(%表示にあっては、小数点以下1位未満の端数)があるときは、これを切り捨てます。

  (注2) 試験研究費割合は、次の算式によって計算した割合です。

(算式) 試験研究費割合=その事業年度の損金の額に算入される試験研究費の額÷平均売上金額(※)

※ 「平均売上金額」とは、適用年度及び適用年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度の売上金額の平均額をいいます。

  ロ 平成29年4月1日から平成31年(2019年)3月31日までの間に開始する各事業年度

税額控除額は、試験研究費の額に増減試験研究費割合に応じた次の税額控除割合(14%が上限となります。)を乗じて計算します。

  (イ) 増減試験研究費割合が5%を超える場合

9%+(増減試験研究費割合-5%)×0.3 (14%を超える場合は14%)

  (ロ) 増減試験研究費割合が5%以下の場合

9%-(5%-増減試験研究費割合)×0.1 (6%未満の場合は6%)

(注) 税額控除割合に小数点以下3位未満の端数(%表示にあっては、小数点以下1位未満の端数)があるときは、これを切り捨てます。

※ 「増減試験研究費割合」とは、試験研究費増減差額の比較試験研究費の額に対する割合をいいます。

※ 「試験研究費増減差額」とは、試験研究費の額から比較試験研究費の額を減算した金額をいいます。

※ 「比較試験研究費の額」とは、適用年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額を平均した額をいいます。

なお、「試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度」により、上記1の制度による税額控除とは別枠で税額控除をすることができます。この場合の税額控除額はそれぞれ次のとおりです。
 ただし、これらの税額控除額がその事業年度の法人税相当額の10%相当額を超える場合は、10%相当額が限度となります。

(1) 平成29年4月1日から平成31年(2019年)3月31日までの間に開始する各事業年度

その損金の額に算入される試験研究費の額が、その事業年度の平均売上金額の10%相当額を超える場合

税額控除額=(試験研究費の額-平均売上金額×10%)×超過税額控除割合

超過税額控除割合=(試験研究費割合-10%)×0.2

※ 「平均売上金額」とは、適用年度及び適用年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度の売上金額の平均額をいいます。

(注) 上記5の税額控除限度額の上乗せ措置(上限25%→35%)の適用を受ける場合には、この制度の適用を受けることはできません。

(2) 平成29年3月31日以前に開始した各事業年度

次のイ又はロのいずれかを選択して適用することができます(イについては設立事業年度の適用はありません。)。

 イ 増加試験研究費の額が比較試験研究費の額の5%相当額を超え、かつ、試験研究費の額が基準試験研究費の額を超える場合

税額控除額=増加試験研究費の額×30%(増加試験研究費割合が30%未満である場合には、その増加試験研究費割合)

※ 「増加試験研究費」とは、損金の額に算入される試験研究費から比較試験研究費の額を控除した残額をいいます。

※ 「比較試験研究費」とは、適用年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額を平均した額をいいます。

※ 「基準試験研究費」とは、当期前2年間の各期の試験研究費の額のうち最も多い額をいいます。

※ 「増加試験研究費割合」とは、増加試験研究費の額の比較試験研究費の額に対する割合をいいます。

ロ その損金の額に算入される試験研究費の額が、その事業年度の平均売上金額の10%相当を超える場合

税額控除額=(試験研究費の額-平均売上金額×10%)×超過税額控除割合

超過税額控除割合=(試験研究費割合-10%)×0.2

6 適用要件

 

 この制度は、中小企業者等以外の法人が平成30年4月1日から平成33年(2021年)3月31日までの間に開始する各事業年度において一定の要件を満たさない場合には適用しないこととされました。
 なお、この制度の適用を受けるためには、控除の対象となる試験研究費の額及び控除を受ける金額を確定申告書等に記載するとともに、その金額の計算に関する明細書を添付して申告する必要があります。

(措法42の4、42の13、措令27の4、措規20、平29改正法附則62) 国税庁タックスアンサーより

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