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譲渡所得の対象となる資産と課税方法

【平成30年4月1日現在法令等】

 

1. 譲渡所得とは 

 

  譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいいます。

 

 

 

2. 譲渡所得の対象となる資産とは 

 

  譲渡所得の対象となる資産には、土地、借地権、建物、株式等、金地金、宝石、書画、骨とう、船舶、機械器具、漁業権、取引慣行のある借地権、ゴルフ会員権、特許権、著作権、鉱業権、土石(砂)などが含まれます。

  なお、貸付金や売掛金などの金銭債権は除かれます。

 

 

 

3. 資産の「譲渡」とは 

 

  譲渡とは、有償無償を問わず、所有資産を一転させる一切の行為をいいますので、通常の売買のほか、交換、競売、公売、代物弁済、財産分与、収用、法人に対する現物出資なども含まれます。また、次の場合にも資産の譲渡があったものとして課税されます。

 

  (1) 法人にたいして資産を贈与した場合や限定承認による相続などがあった場合

    次のイ又はロのような事由により資産の移転があった場合には、時価(通常売買されれう価格をいいます。以下同じ。)で資産の譲渡があったものとして、課税されます。

    イ. 法人に対する贈与や遺贈、時価の2分の1未満の価格による譲渡

    ロ. 限定承認の相続や限定承認の包括遺贈(個人に対するものに限られます。)

 

  (2) 1億円以上の有価証券とうを所有している一定の居住者が国外転出等をする場合(平成27年7月1日以後)

 

  (3) 地上権や賃借権、地役権を設定して権利金などを受け取った場合
 建物や構築物を所有するための地上権や賃借権(以下「借地権」といいます。)の設定などにより受ける権利金などについても、その金額が借地権の設定された土地の時価の2分の1(地下又は空間について上下の範囲を定めたものである場合等は4分の1、大深度事業と一体的に施行される事業により設置される施設等の全部の所有を目的とする地下について上下の範囲を定めたものである場合は4分の1にさらに一定の割合を乗じたもの)を超える場合には、譲渡所得として課税されます。

 

  (4) 資産が消滅することによって補償金などを受け取った場合
 収用などにより、借地権、漁業権などの資産が消滅したり、その価値が減少することにより一時に補償金などを受け取ったときは、その補償金などは譲渡所得として課税されます。

 

 

 

4. 所得税の課税されない譲渡所得 

 

  資産の譲渡による所得のうち、次の所得については課税されません。

 

  (1) 生活用動産の譲渡による所得
 家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得です。
 しかし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個又は1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は課税されます。

 

  (2) 強制換価手続により資産が競売などをされたことによる所得
 資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難な場合に、1強制換価手続(滞納処分や強制執行、担保権の実行としての競売、破産手続等)により、資産を譲渡したことによる所得及び2強制換価手続の執行が避けられないと認められる場合における資産の譲渡による所得で、その譲渡代金の全部が債務の弁済に充てられたものです。

 

  (3) 貸付信託の受益権等の譲渡による所得
 償還差益につき租税特別措置法41条の12第1項の規定の適用を受ける割引債、預金保険法2条2項5号に規定する長期信用銀行債等、貸付信託の受益権、農水産業協同組合貯金保険法2条2項4号に規定する農林債の譲渡による所得です。

 

  (4) 国又は地方公共団体に対して財産を寄附した場合や、公益を目的とする事業を行う法人に対する財産の寄附で国税庁長官の承認を受けた場合の所得
 法人に対して財産を贈与又は遺贈(以下「寄附」といいます。)した場合には、時価で財産の譲渡があったものとして譲渡所得が課税されますが、国や地方公共団体に対して財産を寄附した場合や、公益を目的とする事業を行う法人に対する財産の寄附で国税庁長官の承認を受けた場合には、その寄附はなかったものとみなされます。

 

  (5) 国等に対して重要文化財等を譲渡した場合の所得
 文化財保護法により指定されている重要文化財(土地を除きます。)を国、独立行政法人国立文化財機構、独立行政法人国立美術館、独立行政法人国立科学博物館、地方公共団体又は一定の地方独立行政法人(以下において「国等」といいます。)に譲渡した場合の譲渡所得については、課税されません。

 

  (注)

   ① 文化財保護法の規定により指定されている重要有形民俗文化財を平成30年12月31日までに国等に譲渡した場合の譲渡所得については、その2分の1相当額が課税対象となります。

   ② 一定の地方独立行政法人への重要文化財又は重要有形民俗文化財の譲渡については、平成26年4月1日以後の譲渡について適用されます。

 

  (6) 財産を相続税の物納に充てた場合の所得
 財産を相続税の物納に充てた場合には、その財産の譲渡はなかったものとみなされます。
 ただし、物納の許可限度額を超える価額の財産を物納した場合には、その超える部分は譲渡所得の課税対象になります。

 

  (7) 債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の所得
 中小企業者である法人の取締役等でその法人の債務の保証人であるものが、その法人の事業の用に供されている資産を、債務処理計画に基づき平成25年4月1日から平成31年(2019年)3月31日までの間にその法人に贈与した場合には、一定の要件の下、その贈与はなかったものとみなされます。

 

 

5. 譲渡所得以外の所得として課税されるもの 

 

  資産の譲渡による所得であっても、次の所得は譲渡所得ではなく、事業所得や雑所得、山林所得として課税されます。

 

  (1) 事業所得者が商品、製品、半製品、仕掛品、原材料などの棚卸資産を譲渡した場合の所得 ⇒ 事業所得となります。

  (2) 不動産所得や山林所得、雑所得を生ずる業務を行っている者がその業務に関して上記(1)の棚卸資産に準ずる資産を譲渡した場合の所得 ⇒ 雑所得となります。

  (3) 使用可能期間が1年未満の減価償却資産、取得価額が10万円未満である減価償却資産(業務の性質上基本的に重要なものを除きます。)、取得価額が20万円未満である減価償却資産で、取得の時に「一括償却資産の必要経費算入」の規定の適用を受けたもの(業務の性質上基本的に重要なものを除きます。)を譲渡した場合の所得 ⇒ 事業所得又は雑所得となります。

  (4) 山林を伐採して譲渡した場合又は立木のまま譲渡した場合の所得

    ⇒ 山林所得となります。しかし、山林を取得してから5年以内に伐採して譲渡したり立木のまま譲渡した場合の所得は、事業所得又は雑所得となります。

  (5) 上記(1)から(4)までの資産以外の資産を相当の期間にわたり、継続的に譲渡している場合の所得

    ⇒ 事業所得又は雑所得となります。

 

 

6. 課税方法

 

  譲渡所得は、譲渡資産の種類によって、次の表のように分離課税の対象となるものと、総合課税の対象になるものとに区分して課税されます。

 分離課税 ⇒ 譲渡所得金額についての税額を、事業所得や給与所得などの他の所得の金額とは区別し、租税特別措置法に規定された税率によって計算します。

 

 総合課税 ⇒ 譲渡所得の金額を事業所得や給与所得などの他の所得の金額と合計し、所得税法に規定された累進税率によって税額を計算します。

 

 

(通法2、所法9、22、33、59、60の2、60の3、所令25、26、79、81、95、169、所基通33-1、33-1の2、措法31、32、37の10、37の15、40、40の2、40の3、40の3の2、41の12、41の14、措令25の15、26の17)

国税庁タックスアンサーより

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