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事業用の資産を買い換えたときの特例

【平成31年4月1日現在法令等】

 

  1. 特例のあらまし 

    個人が、事業の用に供している特定の地域内にある土地建物等(譲渡資産)を譲渡して、一定期間内に特定の地域内にある土地建物等の特定の資産(買換資産)を取得し、その取得日から1年以内に買換資産を事業の用に供した時は、一定の要件のもと、譲渡益の一部に対する課税を将来に繰り延べることができます。(譲渡益が非課税となるわけではありません。)

    これを、事業用資産の買換えの特例と言います。

    この特例を受けますと、売った金額(譲渡価格)より買い換えた金額(取得価格)の方が多いときは、売った金額に20%の割合(以下、この乗ずる割合を「課税割合」と言います。)(注)を掛けた額を収入金額として譲渡所得の計算を行います。

    売った金額より買い換えた金額の方が少ないときは、その差額と買い換えた金額に課税割合を掛けた額との合計額を収入金額として譲渡所得の計算を行います。

    (注) 次の2.(2)ロ.に該当する場合の課税割合は、平成27年8月10日以後、譲渡資産が地域再うぃほう第5条第4項第5号イに規定する集中地域(※)以外の地域内に所在し、かつ、買換資産が次に掲げる地域内に所在する時は、それぞれ次に掲げる割合となります。

    (1) 東京都の特別区の存する区域 30%

    (2) 集中地域(東京都の特別区の存する区域を除く。) 25%

  ※集中地域とは、具体的には、平成30年4月1日における次に掲げる区域をいいます。

    イ.  東京都の特別区の存する区域及び武蔵野市の区域並びに三鷹市、横浜市、川崎市及び川口市の区域のうち首都圏整備法施行令別表に掲げる区域を除く区域

                ロ. 首都圏整備法第24条第1項の規定により指定された区域

    ハ. 大阪市の区域及び近畿圏整備法施行令別表に掲げる区域

    ニ. 首都圏、近畿圏及び中部圏の近郊整備地帯等の整備のための国の財政上の特別措置に関する法律施行令別表に掲げる区域

 

  2. 特例を受けるための要件

    この特例を受けるためには、次の要件全てに当てはまることが必要です。

   (1) 譲渡資産と買換資産は、共に事業用のものに限られます。

 

   (2) 譲渡資産と買換資産とが一定の組合せに当てはまるものであることです。

     この組合わせの代表的なものとして、次のものがあります。

        イ. 東京都の23区、大阪市などの既成市街地等内にある事業所(工場、作業場、研究所、営業所、倉庫その他これらに類する施設(福利厚生施設を除きます。)をいいます。)として使用されている建物又はその敷地の用に供されている土地等で、その譲渡の日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるものを譲渡して、既成市街地等以外の一定の地域(国内に限ります。)にある事業用の土地等や建物、構築物又は機械装置を取得する場合

     (注) 譲渡資産の譲渡又は買換資産の取得のいずれかが平成29年3月31日以前である場合には、譲渡資産には事業所に加え事務所として使用されている建物又はその敷地の用に供されている土地等が含まれます。

   ロ.  譲渡の日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超える国内にある事業用の土地等や建物又は構築物を譲渡して、国内にある事業用の土地等、建物又は構築物を取得する場合

     (注) この特例は、令和2年3月31日までの譲渡について適用されます。
 また、買換資産の土地等については、次のいずれかに掲げるものでその面積が300平方メートル以上のものに限られます。

 

    ① 事務所、工場、作業場、研究所、営業所、店舗、倉庫、住宅その他これらに類する施設(福利厚生施設に該当するものを除きます。)(以下「特定施設」といいます。)の敷地の用に供されるもの(当該特定施設に係る事業の遂行上必要な駐車場の用に供されるものを含みます。)

    ② 駐車場の用に供されるもので、建物又は構築物の敷地の用に供されていないことについて、都市計画法第29条第1項又は第2項の規定による開発行為の許可の手続や、建築基準法第6条第1項に規定する建築確認の手続などが進行中であるというやむを得ない事情があり、その事情があることが申請書の写しなどの一定の書類により明らかにされたもの

 

  (3) 買換資産が土地等であるときは、取得する土地等の面積が、原則として譲渡した土地等の面積の5倍以内であることです。この5倍を超えると、 超える部分は特例の対象となりません。
 なお、令和元年12月31日までの譲渡資産の譲渡に限って、一定の農地への買換えの場合は10倍以内とされることがあります。

 

  (4) 資産を譲渡した年か、その前年中、あるいは譲渡した年の翌年中に買換資産を取得することです。
 なお、前年中に取得した資産を買換資産とするためには、取得した年の翌年3月15日までに「先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書」を税務署長に提出をしておくことが必要です。
 また、譲渡した翌年中に買換資産を取得する予定の場合には、確定申告書を提出する際に取得する予定の買換資産についての取得予定年月日、取得価額の見積額及び買換資産が買換えの組合せのいずれに該当するかの別、その他の明細を記載した「買換(代替)資産の明細書」を添付することが必要です。

 

  (5) 買換資産を取得した日から1年以内に事業に使うことです。なお、取得してから1年以内に事業に使用しなくなった場合は、原則として特例は受けられません。

  (6) この特例を受けようとする資産については、重ねて他の特例(優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例や租税特別措置法第19条各号に掲げる特例等)を適用することはできません。

  (7) 土地等の譲渡については、原則として、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超えていることです。なお、令和2年3月31日までにした土地等の譲渡については、この要件が停止されています。ただし、(2)イ及びロで説明した組合せの場合には、所有期間について、譲渡した年の1月1日において10年を超えていることが、個別の要件とされています。

  (8) 譲渡資産の譲渡は、収用等、贈与、交換、出資によるもの及び代物弁済としての譲渡ではないこと、また、買換資産の取得は、贈与、交換又は一定の現物分配によるもの、所有権移転外リース取引によるもの及び代物弁済によるものではないことです。

 

 3. 譲渡所得金額の計算

   この特例の適用を受けた場合の譲渡所得の金額は、原則として次の算式によって計算します。(課税割合が20%の場合)

   (1) 譲渡資産の譲渡価格 ≦ 買換資産の取得価格の場合

    イ. 譲渡資産の譲渡価格 ×0.2 = 収入金額

    ロ. (譲渡資産の取得費 + 譲渡費用 ) × 0.2 = 必要経費

    ハ. 収入金額 - 必要経費 = 課税される譲渡所得の金額

   (2) 譲渡資産の譲渡価格 > 買換資産の取得価格の場合

    イ. 譲渡資産の譲渡価格 - 買換資産の取得価格の場合

    ロ. (譲渡資産の取得費 + 譲渡費用 ) × 0.8 = 収入金額

    ハ. 収入金額 - 必要経費 = 課税される譲渡所得の金額

 

  4. 申告手続

    この特例を受けるためには、次の書類を添付し確定申告をすることが必要です。

   (1) 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書) 【土地・建物用】

   (2) 買換資産の登記事項証明書などその資産の取得を証する書類

   (3) 譲渡資産及び買換資産が特例の適用要件とされる特定の地域内にあることを証する市区町村長等の証明書など

     (注) 買換資産を取得する見込みで、この特例の適用を受けた場合には、上記の(2)の登記事項証明書などは、買換資産を取得した日から4か月以内に提出しなければなりません。

 

   5. 更生の請求や修正申告

   (1) 更正の請求

     買換資産を取得する見込みでこの特例の適用を受け申告した買換資産の「取得価額の見積額」より「実際の取得価額」の方が多かった場合には、買換資産を取得した日から4か月以内に「更正の請求書」を提出して所得税の還付を受けることができます。

 

   (2) 修正申告

     買換資産を取得する見込みで、この特例の適用を受け申告した買換資産の「取得価額の見積額」より「実際の取得価額」の方が少なかった場合には、買換資産の取得期間を経過する日から4か月以内に修正申告をし、差額の所得税を納付しなければなりません。
 翌年中に買換資産を取得する見込みで買換資産を取得しなかった場合又は買換資産の取得の日から1年以内に事業の用に供しない若しくは供しなくなった場合は、これらの事情に該当することとなった日から4か月以内に修正申告をし、差額の所得税を納付しなければなりません。

 

 

(措法31の2、37、37の2、37の3、措令25、措規18の5、措通18の5、措通37の3-1の2、震災特例法12、平29改正法附則51)

 

 

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